フィクションの中の「違法行為」?創作物で犯罪の成否を論じる意味は?

いろんな創作物(フィクション)があり、ひとそれぞれ、いろんな楽しみ方があっていいと思います。
ですが、最近になって、作品の中の違法行為が指摘されることが多くなった気がします。
もちろん、現実での違法行為は犯罪となりえますが、フィクションの中で違法行為が行われても犯罪とはなりません
すなわち、作品の登場人物が現実に逮捕されるわけではありません(原作者や製作者が逮捕されることもありません)。

犯罪者は誰?

いわゆる刑事ものでは、犯人よりも主人公の警察官のほうが犯した犯罪の数が多い、ということも珍しくありません。

例えば、主人公が犯人と思われる人物に暴行を加え自白させる。
よくあるシーンですが、現実ではこのような自白は証拠として認められません。

作中では、犯人を痛めつけて自供させて逮捕、めでたしめでたしと物語は終わります。
フィクションで考えるのはここまででいいのですが、現実では逮捕後に裁判が行われることになります。
そして、裁判が行われるとすれば、犯人は無事に無罪を勝ち取ることになるのです。

この辺の話は「違法収集証拠の排除)」の話となります(刑事訴訟法319条)。
興味のある方は「刑法」ないし「刑事訴訟法」について調べてみてください。

刑事訴訟法
第319条
第1項
 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
第2項
 被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
第3項
 前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。

出典:e-Gov法令検索 刑事訴訟法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000131_20240215_505AC0000000066)

フィクションの中で日本の法律は通用しているか

世にある多くの創作物(フィクション)は、「架空の世界」の話として作られています。
例えば、「この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません」というような文言が表示されることがあります。

断り書きがなくても、作品の登場人物は現実には存在しませんし、劇中発生している事件も現実には起きていません。
つまり、フィクションとは「架空の世界で架空の人物が行う架空の出来事」といっていいでしょう。

ここまではおそらく異論を持つ方はいないでしょうが、問題は、そんな架空の世界において「現実の日本の法律が適用されているのか」ということです。
言い換えると、そのほかの点においてすべて架空と述べておきながら、法律だけが現実と同じ法律が通用していると考えることはできるでしょうか

「この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。しかし、日本の法律が適用されています」という注意書きであれば、法律は通用していると言えるでしょうが、そうでなければ法律だけが特別扱いということもないでしょう。

現に、ほとんどの刑事ものでは日本の法律は無視されています

しかし、日本の法律が通用していないなら、そもそも作品中で「犯罪」として行われていることは果たして犯罪なのだろうか?
なぜ犯人は「逮捕」されるのか?

そのような疑問が生じます。
その点に関しては、「犯人の行為は犯罪に当たるが、主人公の行為は犯罪に当たらない」という都合の良い法律が適用されている世界なのだと理解するしかありません。
いうまでもなく、日本は「犯罪捜査のためなら警察官は何をやってもよい」という国ではありません。

どこまでの法律をケアするか

フィクションの中できちんと法律をケアするのであれば、いったいどこまでカバーする必要があるでしょうか。
刑事ものであれば、刑法・刑事訴訟法、警察法・警察官職務執行法は最低限押さえていなければならないでしょう。
そして、パトカーが出てくるなら道路交通法、暴力団が出てくるなら暴力団対策法…
そこまで気にしていたら、もはや作品を楽しめなくなるでしょう。

教育上よろしくない

長々と話してきましたが、フィクションの中の行為を難じるとしたら、「子どもの教育によろしくない」というあたりが落としどころではないでしょうか。
なぜ作中で行われた行為がよくないのかを話し合いながら法律に関する知識を深めていければ充分だと思います。

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