人間、生きていればいろいろな悩みがあるものですが、家族関係に問題を抱えている人もいるかもしれません。
「家族と縁が切れれば今の悩みから解放されるのに」、「親子の縁を切ることができればいいのに」と考えることもあるでしょう。
しかし結論を言うと、家族と縁を切ることはできません。
法律上、親子や兄弟姉妹といった家族関係を消滅させる制度はありません。
心穏やかになるには家族と縁を切る以外にない人にとって、「家族と縁を切る方法はない」と言い切ってしまうだけでは絶望的でしょうから、少し方法を考えてみましょう。
限界はありますが、家族との縁を切るためには、法律上の対策と事実上の対策が考えられます。
なお、ここでいう家族とは「血縁関係」にある家族のことを意味します(参照:家族の範囲は意外と広い)。
切れる人間関係・切れない人間関係
仕事や友人・知人との人間関係に悩んでいるなら仕事を変えたり、連絡を取らないようにして距離を取り、以後のかかわりを断つことは可能です。
しかし、家族に関しては、以後のかかわりの一切を断つということは不可能です。
勘当
日常用語的に親子関係を解消させる意味合いで「勘当」という言葉が使われることがありますが、法的に親子関係を消滅させる制度は存在しません。
つまり「勘当」する・されることはできません。
どうあがいても家族関係を消滅させることはできないのです。
距離を置くのが限界
法律上は家族関係を解消できませんが、事実上のかかわりを断つことはできます。
その方法の一つが「家族との連絡を絶って音信不通になること」です。
基本的にはそれでほとんどのトラブルは回避できるようになるでしょう。
日常的に顔を合わさないようにするだけで、不快な思いをすることも無くなるでしょう。
ただし、音信不通は万全ではありません。
どうしてもかかわりを持たなければいけない場面が出てきます。
それは「相続」です。
相続に関しては、「関わりたくない」と考えたとしても法律上のかかわりを拒否することはできません。
また、放置しても状況は改善しません。
必ず法的な対応が必要となってきます(参照:相続方法は3種類)。
離婚・離縁
血縁に関しては関係を解消することはできませんが、縁を切りたい相手が「配偶者(結婚相手:夫から見た妻、妻から見た夫)」であれば、離婚すれば縁を切ることは可能です。
ただし、縁を切れるのは配偶者との間に子どもがいないケースに限られます。
子ども(特に未成年の場合)との関係では養育費など、最小限のかかわりは維持されることになります(参照:離婚する前に決めること)。
なお、「養親子関係(民法792条以下)」は解消することができます。
養子縁組は「離縁(民法811条以下)」することによって解消できるのです。
離縁すれば、以後、養親子関係はなくなります。
民法
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(協議上の離縁等)
第811条第1項
縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
音信不通の不利益はある?
家族と縁を切る方法として音信不通を上げましたが、家族と音信不通となることによる不利益はあるでしょうか。
相続の場面に関しては完全な音信不通をつらぬけないことは上で説明しました。
それ以外の場面で音信不通による不利益はほとんど考えられません。
例えば、自分が知らない間に借金の保証人に名前を使われていたような場面でも、心配する必要はありません。
自ら保証人になったのでなければ(保証人になるには保証人自らが契約書に署名する必要がある)、保証人として借金を肩代わりする(返済する)必要はありません(民法446条)。
(保証人の責任等)
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
民法第446条
第1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
第2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
第3項 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
相続
日ごろは顔を合わせなければ嫌な思いをすることはなくなりますが、「相続」となると知らん顔を貫き通すというわけにはいきません。
必ずかかわりを持たないといけなくなります。
つまり、日ごろ連絡を取っていなくても、あるいは相続することを望んでいなくても、状況によっては望まない相手の相続人になることがあります。
所在不明の相続人
相続人のうち、一人でも連絡が取れない人がいると、遺産相続を行うことができません(参照:遺産の分け方は相続人全員の話し合いで決める)。
ある人が亡くなると相続人による遺産分割協議が必要ですが、所在不明者(音信不通になっている人)は遺産分割協議に参加できないので、遺産分割がいつまで経っても成立せず、相続財産が「宙に浮く」状態のままとなってしまいます。
連絡のつかない相続人(所在不明の相続人)がいるまま遺産分割を行うには、「不在者財産管理人」の選任を裁判所に申し立てる必要があります。
ただし、被相続人(この人が亡くなることで遺産相続が始まる人、遺産のもともとの持ち主)が「遺言書(遺言)(参照:遺言書には3つの種類)」を作成していると、遺産分割協議の必要がなくなりますので、相続をきっかけとした「家族と顔を合わせるリスク」はなくなります。
相続の放棄
完全に家族と連絡を絶っているわけではなく、単に縁を切りたい相手の相続に係わりたくないだけであれば、その人物の相続を放棄するという選択もあります。
相続放棄に関しては、ほかの相続人への連絡も必要なく自分一人で行うことができるため、相続を放棄した(する)という報告だけほかの相続人に行うといいでしょう。
これ以後も相続を望まないなら、その都度相続放棄の手続きを行うことで、家族との関係を極力排除できます。
縁を切るのは難しい
家族仲よく暮らすのが理想かもしれませんが、できないものはできないし、我慢する義理も義務もありません。
したがって、家族から離れて暮らせば心穏やかに過ごすことができます。
おそらく問題なのは、そのように割り切って家族を「捨てることができる人」ではなく、最後まで家族を「捨てることができない人」でしょう。
しかし、悩みの原因が家族であれば、家族を「捨てる」覚悟が必要な場面もあります。
家族との物理的な距離を取ることができないのであれば、「精神的」な距離を取りましょう。
精神的なかかわりを断つ
法律上は家族と縁を切る方法がないことは説明しました。
家族と縁を切る方法はあくまでも精神的な(事実上の)方法しかありません。
かつて存在した「村八分」においても「火事」と「葬式」は別だと言われています。
同様に、現在においても「葬式(相続)」からは逃れられません。
葬式には出席しなくても構いませんが、相続だけはきちんと手続きをしないとかかわりを断つことはできません。
しかし、それ以外の場面では、日常的なかかわりを断つことは可能です。
どうしてもかかわらなければいけない場面以外、極力関係を断つことによって穏やかに暮らすことができるのなら、精神的に家族を捨てる選択をしたほうがいいでしょう。
絶縁状を送る
家族を捨てる決断をした場合、「絶縁状」を作成する方法も考えられます(参照:絶縁状って?内容署名郵便で送ることも)。
「絶縁状」とは、一般的には「送りつけた相手に絶縁を宣言するもの」という意味合いの書類とされています。
絶縁状は法律に定めのある書類ではないため、事実上の効果しかありませんが、かかわりを断ちたい相手に対して「二度と連絡しないでほしい」旨の通知をすることができます。
したがって、法的な効果はないとはいえ、絶縁状を受け取った相手に今後のかかわりを遠慮しようと思わせる効果はあるだろうと思われます。
また、「絶縁誓約書」や「絶縁念書」などを作成することも考えられます。
人間関係に関するご相談は
家族に関して悩みをお持ちの方はお気軽にご相談ください。
精神的な効果を期待して縁を切りたい相手に、いわゆる「絶縁状(もしくは、縁切りの誓約書)」の送り付けをお考えの場合もご連絡ください。
絶縁状の作成の際は、ご希望に応じて行政書士名での作成、および送付を行います。
福岡市内を中心に、全国どこでも対応いたします。
対面での面談から、ビデオ会議を利用したオンラインでの面談も可能となっています。
平日は仕事が忙しく面談の時間を設定することができないという場合は、土日祝日の面談にも対応いたします。

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