相続方法は3種類:単純承認・限定承認・相続放棄のうちのどれか一つを選択する

ひとくちに「相続」とは言いますが、法律(民法)上、相続には3つの種類があります(民法915条以下)。

  • 単純承認
  • 限定承認
  • 相続放棄

なお、ある人が亡くなると、遺産の相続をしなければいけません(亡くなって遺産を遺す人のことを「被相続人」といいます)。
相続が始まると「相続人(遺産を相続する人、遺族)」は、これら単純承認・限定承認・相続放棄の3つの相続方法の中から一つを選んで手続きをしなければいけません。

3つの相続方法

相続は、単純承認、限定承認、相続放棄という種類ごとに手続きが異なります(民法915条)。

民法
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条第1項
 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

なお、すでに相続を経験した方もいると思います。
しかし、相続のときに何か特別に手続きをしたことはない、相続税の手続き以外しなかったという方は、法的には単純承認をしたことになります。
すなわち、とくに相続の手続きをしなければ単純承認をしたことになります(民法921条)

民法
(法定単純承認)
第921条
 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
第2号
 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

以下、単純承認、限定承認、相続放棄のそれぞれについて詳しく見ていきます。

単純承認

一般的な相続方法が「単純承認」です(民法920条以下)。
ほとんどの相続では単純承認が行われています

単純承認では特別な手続きを必要としないので、「相続のときにとくに何も手続きをしなかった」というケースでは、法律上はこの単純承認を行ったことになります(民法921条)。

単純承認では、被相続人(亡くなった人、財産を遺す人)の遺産をすべて相続することになります。
「すべて」というのはプラスの財産もマイナスの財産もあわせて相続するという意味です。
プラスの財産というのは、銀行預金や現金、土地や建物などの不動産のことです。
マイナスの財産というのは、借金(負債)のことです。
つまり、資産も借金も被相続人に属する遺産をすべて相続することになります。

相続人(遺産を受け取る人)が自分が相続することを知ったとき(たいていの場合は被相続人が亡くなった日)から3か月の間で何も手続きをしなければ、単純承認をしたとみなされます(民法921条2号)。
また、相続財産の一部でも自分のために消費してしまったり、遺産の一部をほかの相続人に気づかれないうちにこっそり自分のものにしてしまっても、単純承認をしたことになってしまいます(民法921条1号・3号)。
また、限定承認や相続放棄の手続きが済んだとしても、遺産を(その一部でも)自分のものにしてしまうと、限定承認や相続放棄は認められません。

民法
第921条
 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
第1号 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
第2号 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
第3号 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

もし、遺産を調べてみるとプラスの財産よりマイナスの財産が多く、遺産だけでは借金を返しきれないような場合では、単純承認をすべきではないかもしれません。
したがって、相続の手続きをする前に、遺産の状況(プラスかマイナスか)を調査します(民法915条第2項)。

民法
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条第2項
 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

もし、遺産がマイナスだというのであれば、以下で説明する限定承認や相続放棄の選択も考慮しましょう。

限定承認

もし遺産のマイナスの財産(借金)が、プラスの財産(預金など)よりも多い場合、あるいは借金がどのくらいあるか分からない場合、単純承認ではなく、「限定承認」という選択肢もあります(民法922条以下)。
限定承認というのは、被相続人のプラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続するというものです。
被相続人のプラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続するので、仮に借金のほうが多かった場合でも、相続人本人のもとからの財産で借金を返済する必要はありません。
もちろん、負債のほうが多ければ、相続人の手元には遺産は何も残りません。

民法
(限定承認)
第922条
 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

限定承認をしたいと思ったら、自分が相続することを知った日(たいてい被相続人が亡くなった日)から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続き(申述)をする必要があります。
申述には収入印紙800円が必要です。

なお、限定承認をするには、相続人全員で共同して家庭裁判所に申述する必要があります(民法923条)。
相続人の中に一人でも反対する人がいると、限定承認を選択することはできません。

民法
(共同相続人の限定承認)
第923条
 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

そのような場合には、次の相続放棄を選択することになります。
相続放棄は、ほかの相続人の同意の必要なく、自分一人で行うことが可能です。

相続放棄

相続放棄」というのは、自分が相続人であるという資格を放棄することです(民法938条以下)。
相続人が相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになり、被相続人の遺産を受け取ることができなくなります(民法939条)。

民法
(相続の放棄の効力)
第939条
 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

もし被相続人の遺産に借金(負債)のほうが多く、遺産だけでは借金を払いきれない場合には相続放棄を考慮することになります。
限定承認と違って、ほかの相続人の意向とは関係なく、単独で放棄することができます
すなわち、ほかの相続人が相続放棄をしても、残りの相続人は相続(単純承認・限定承認のいずれも)することができます。

相続放棄をするには、自分が相続をすることを知った日(たいてい被相続人が亡くなった日)から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続き(申述)する必要があります(民法938条)。
申述には収入印紙800円が必要です。

民法
(相続の放棄の方式)
第938条
 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

なお、生命保険は相続財産ではないため、相続放棄をしても生命保険の保険金を受け取ることは可能です。

注意点としては、相続放棄をするとはじめから相続人ではなかったことになるので、ほかの人が相続人になってしまう点があります。
たとえば、被相続人に子ども、両親、兄弟がいる場合、本来なら子どもが相続人になり、両親と兄弟は相続人にはなりませんが、子どもが相続放棄をすると、まず両親が相続人になります。
続いて両親も相続放棄をすると兄弟が相続人になります。
したがって、もし負債が多くて相続放棄を選択した場合、子ども、両親、兄弟すべてが相続放棄の手続きをしなければいけません。

また、相続放棄は、借金を負担したくないという場合以外にも、相続人の中の特定の人物に遺産を集中させたいという場合に活用することができます。
たとえば、被相続人が何らかの家業を行っていて、相続人のうちの一人に家業を継がせる(遺産を単独で相続させる)ために、ほかの相続人が相続を放棄するという活用法があります。

なお、相続放棄をすると、一切の責任から解放されるということではなく、相続財産を管理する人が見つかるまでは相続財産の管理を続けなければいけません(民法940条)。

民法
(相続の放棄をした者による管理)
第940条第1項
 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

もし、相続財産に不動産が含まれている場合、すべての相続人が相続放棄を選択した際には、相続財産管理人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります(参照:裁判所「相続財産清算人の選任」)。
相続財産管理人を選任してもらわなければ、相続放棄をした後でも不動産を維持・管理する責任は残ります。
当然、維持費を負担しなければいけません。
たとえば、老朽化した建物が崩壊し、近隣に被害を与えた場合には、賠償しなければいけません(民法717条)。

民法
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第717条
第1項
 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
第2項
 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
第3項
 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

判断する時間は3ヶ月しかない

単純承認、限定承認、相続放棄のいずれの相続を選択するにせよ、3ヶ月という期間は長くありません。
相続人としては、速やかに行動する必要があります。

遺産がどのくらいあるのかを調べて、プラスの財産とマイナスの財産がそれぞれどのくらいあるのかをきちんと調べ上げようとしたら、相続の話し合い(手続き)は、四十九日が済んでからというのでは時間が足りなくなるおそれがあります。

そのためにも、被相続人(遺産を遺すことになる人)自らあらかじめ財産をリストアップしておくか、相続人の側できちんと把握しておく必要があるでしょう。
できれば、「遺言書(遺言)」として、正式な形に残しておくのが望ましいと言えます(参照:遺言書には3つの種類)。
財産に関しては、被相続人本人が一番わかっているはずなので、やはり被相続人が財産の情報をまとめておくのが最善と言えます。
とくに、負債を多く抱えている人は、正確な負担額の把握が必要です。

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