婿養子は養子?結婚しただけでは養子にならない

結婚するときに、夫が妻の氏に変更することを「婿養子」ということがありますが、「養子」という言葉が付いていても、法的には養子ではありません
つまり、氏を変更した夫と、妻の親との間に養親子関係は生じません

ただし、結婚(婚姻)をすると、配偶者(結婚相手、夫から見た妻、妻から見た夫)の親(いわゆる義理の親)との間に姻族関係が生じますから、義理の親との間で親族関係に入ります民法725条、参照:家族の範囲は意外と広い)。

民法
(親族の範囲)
第725条
 次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

夫婦同氏制

結婚するときには、夫か妻のいずれの氏(名字、苗字)を名乗ることにするのかを決めて婚姻届を提出します(民法750条、戸籍法74条)。

民法
(夫婦の氏)
第750条
 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

戸籍法
第74条
 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項

出典:e-Gov法令検索 戸籍法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224)

以上のように、法律上は結婚するときに夫婦のいずれかの氏に変更することになっており、法的な意味としては、夫の氏を名乗る場合と妻の氏を名乗る場合とで違いはありません
夫が妻の氏に変更することを「婿養子」というのなら、妻が夫の氏に変更することを「嫁養子」とでも呼ばなければいけません。
しかし、妻が夫の氏に変更したからと言って、妻が夫の親の子になる(あるいは、家に入る、ということも)ことはありません。
婚姻時の氏の変更には「夫婦が称する氏を決めた」という以上の意味はありません(注)。

(注)親子であれば、お互いに相手の相続人となれますが、配偶者と配偶者の親の間(いわゆる義理の親子関係)では、相続人になることはできません(参照:相続人と相続分)。

養子縁組

配偶者の親と親子関係に入るには、別途、養子縁組をしなければいけません。
養子縁組をすれば養親子関係に入り法的に親子となりますが、一般的に婚姻時に配偶者の親と養子縁組をするケースはほとんどありません。

しかし、もし、配偶者の親が「婿養子」に自分の財産を相続させたいと考えるなら、婚姻に際し、養子縁組(民法792条)をすることが考えられます(参照:養子は誰を相続するの?)。

民法
(養親となる者の年齢)
第792条
 二十歳に達した者は、養子をすることができる。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

氏の変更と養子かどうかは関係ない

これまで見てきたように、結婚するときに氏を変更したからといって、親子関係が生じるわけではありません
親子関係を生じさせたければ、養子縁組をしなければいけません(戸籍法66条)。

戸籍法
第66条
 縁組をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。

出典:e-Gov法令検索 戸籍法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224)

また、逆に、養子縁組をしたからといって氏を変更しなければいけないわけではありません。

原則は氏を養親の氏に変更する

原則的には養子縁組をすると、養子は養親の氏を名乗ります(民法810条)。
しかし、結婚するときに氏を変更した場合は、養子縁組にかかわりなく、婚姻届を提出したときに変更した氏をそのまま名乗り続けることになります(民法810条ただし書き)。

民法
(養子の氏)
第810条
 養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

通常の婚姻

婚姻に際し、夫が妻の氏に変更するケースを想定します。
早良太郎(夫)さんと荒江花子(妻)さんが結婚した場合を表にすると以下のようになります。

結婚前結婚後
早良 太郎荒江 太郎
荒江 花子荒江 花子

夫になる早良太郎さんが氏を変更したので荒江太郎に変わっています。
妻の荒江花子さんは結婚後も同じ姓を名乗りますので、荒江花子さんのまま変更はありません。

通常の養子縁組

通常の養子縁組によって氏を変更するケースを想定します。
福岡二郎(養親)さんと荒江太郎(養子)さんが養親子になる場合を表にすると以下のようになります。

原則縁組前縁組後
養親福岡 二郎福岡 二郎
養子荒江 太郎福岡 太郎

養子になる荒江太郎さんが氏を変更したので福岡太郎に変わっています。
養親となる福岡二郎さんは養子縁組後も同じ姓を名乗りますので、福岡二郎さんのまま変更はありません。

婚姻後の養子縁組

婚姻に際し氏を変更した妻が養子縁組をしたケース(妻は養子縁組をしているが夫は養子縁組をしていない)を想定します。
登場人物は夫、妻(養子)、養親の3人に増えています。
ここでは、早良太郎さんと荒江花子さんが結婚して、妻の荒江花子さんの氏に変更し、荒江太郎さんと荒江花子さんと変更した後に養子縁組をすることになります。
結婚後に荒江花子さんが福岡二郎さんと養子縁組をした場合を表にすると以下のようになります。

例外養子縁組前養子縁組後
荒江荒江
荒江荒江
養親福岡福岡

表のように、結婚後の養子縁組では氏の変更はありません。

婿養子となるケース

以上のことを踏まえて、「婿養子」が実現するケースについても見ておきます。
上の婚姻後の養子縁組において、夫の荒江太郎さんが妻の荒江花子さんの実の親と養子縁組をすると、婚姻において氏を変更した荒江太郎さんが荒江花子さんの親(養親)の子ども(養子)となりますから、「婿養子」と呼ぶことが可能になります。

なお、養子縁組をするのは結婚前でも結婚後でも構いません。

相続人にはならないが扶養義務はある

なお、婚姻時に氏を変更したのみでは相続人になれませんが、結婚すると配偶者の親に対する「扶養義務」が生じることがあります(民法877条)。

民法
(扶養義務者)
第877条
第1項 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
第2項 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

扶養というのは、親・子・兄弟姉妹・三親等内の親族(参照:家族の範囲は意外と広い)に対する生活の支援のことです。
生活の支援というのは、金銭的な支援や療養・看護・介護などのことを意味します。
扶養義務があるといっても、自分の生活を犠牲にするまでのことは要求されません。
自分の生活・生計に余裕がある範囲で、ということですが、配偶者の親というだけなら「三親等内の親族」の範囲にとどまりますが、養子縁組をすると「親子」となってしまいますから、扶養義務の程度や責任も大きくなる可能性があります。

婿養子は誤用

長々と説明してきましたが、要するに「婿養子」という制度はありません。
結婚によって親子関係は生じません
親子関係を生じさせるのは、養子縁組をしたときのみとなります。

一般的に婚姻時に養子縁組をすることはほとんどありませんから、「婿養子」と呼ばれていても、実際には養子ではありません。
そして、養子縁組をしていなければ相続人になりません。
したがって、配偶者の家の財産をわがものにしたければ、養子縁組をしましょう。
しかし、同時に扶養義務も発生することを忘れてはいけません。

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