遺言書のせいで遺産がもらえない?遺留分で遺産を確保する

遺される家族のために遺言書(遺言)を作ろうと考える人もいると思います(参照:遺言書には3つの種類)。
しかし、遺言書が原因で思わぬ不利益を被ることになる家族が出てくることがあります。

遺言書の記載が法律に優先する

遺言書がなければ法律の規定に従って遺産相続が行われることになります(法律で定められた相続、ということで「法定相続」といいます)。
一方、遺言書を作成すると、遺言書の記載内容が法律の内容に優先する(法律で認められた範囲内で)ことになります(民法902条)。

民法
(遺言による相続分の指定)
第902条
第1項 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
第2項 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

遺言書には、誰に・何を・どのくらい相続させるのかを記載することになります。
これによって、遺産の行方を決めることができます。
同時に、遺言書の定め方によっては、遺産について何も書かれていない家族は遺産を受け取ることができない可能性があります
例えば、遺言書にすべての遺産を特定の相続人(遺族)に相続させることにしたような場合は、ほかに相続人がいたとしても、残りの相続人が受け取る遺産はありません。
したがって、法律の定めでは遺産を相続することが可能なのに、遺言書の記載のほうが優先される結果、遺言書を作成したために遺産をもらえない家族が出てしまうことがあります。

遺産相続

ある人が亡くなると遺産相続が行われることになります。

なお、相続の対象となる遺産の持ち主のことを「被相続人」といいます。
反対に、遺産を相続することになる人のことを「相続人」といいます。
相続人が相続することになる財産のことを「相続分」といいます。

誰が相続することになるかは法律で定められています(民法887条、889条、890条)。
これを「相続人」といいますが、法律で定められた相続人ということで「法定相続人」ということもあります。
つまり、被相続人の配偶者、子ども、親(祖父母)、兄弟姉妹です(参照:遺言書がない場合の相続はどうなるの?)。

民法
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条
第1項 被相続人の子は、相続人となる。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第889条
第1項
 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹

(配偶者の相続権)
第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

遺言書がない場合は法定相続が行われる

遺言書(遺言)がない場合は、法律で定められた人が法律で定められた相続分を相続することになります(民法900条、参照:遺言書がない場合の相続はどうなるの?)。

民法
(法定相続分)
第900条
 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

遺言書があれば遺言書の内容に従う

被相続人が作成した遺言書が遺されていれば、遺言書の記載に従った遺産相続が行われることになります(参照:遺言書に記載すること・できること)。
つまり、誰に遺産を相続させるかは被相続人本人が決めることができるのです。

相続人全員で遺言書と異なる内容の遺産分割もできる

ただし、遺言書の内容に関係なく、相続人全員の協議によって遺産相続の内容を決めることも可能です(遺産分割協議、参照:遺言書の内容が気に入らないときは相続人全員で話し合う)。

遺言書の内容によっては、相続人の中で自分の相続分が気に入らないという人も出てきます。
相続人全員が遺言書の内容が気に入らなければ遺産分割協議を開くことになるでしょうが、もし相続人のうちの一部の人だけが遺言書の内容に納得いかない場合、ほかの相続人の意向によっては遺産分割協議が開けない場合も出てきます。

遺産分割協議が開けない場合は遺留分を主張する

例えば、被相続人が農業を営んでいたり、自営業を営んでいるなど、家業を家族の特定の人物に継がせたいと考えていた場合、子どものうちの一人に遺産のすべてを相続する内容の遺言書を作成することがあります。
この場合、ほかの子どもは遺産を受け取れなくなってしまいます。
そのような場合のために、法律は「遺留分」という制度を用意しています(民法1042条)。
ただし、遺留分は、法律で定められた相続分(法定相続分)よりも少ない割合が認められているにすぎません。
さらに、遺留分を主張できるのは、被相続人の配偶者、子ども、親のみです。
兄弟姉妹は法定相続人ではありますが、遺留分はありません。

民法
(遺留分の帰属及びその割合)
第1042条
第1項 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
第2項 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

もし遺言書の内容に納得できないにも関わらず遺産分割協議が開けない場合は、納得いかない相続人が遺留分を主張することができます(遺留分侵害額請求権、参照:遺言書を作成するときの注意点)。

遺留分侵害額請求権の行使には期間の制限がある

遺留分侵害額請求権を行使するには期間の制限があるため、すみやかな行使が必要です(民法1048条)。
つまり、相続が開始したことを知ったときから1年、あるいは相続が開始したときから10年で時効によって請求権は消滅します。
「相続が開始したとき」というのは、自分が相続人になったことを知ったときのことで、相続人が被相続人の子どもである場合は、通常は被相続人が亡くなったことを知ったときと一致します。
したがって、ほとんどのケースで被相続人の死後1年間しか猶予はありません。
被相続人の意向と関係なく、どうしても相続分を確保したければ、すみやかな行動が求められます。

民法
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第1048条
 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

遺言書によって遺産がもらえない可能性があるのは兄弟姉妹

以上のことをまとめると、被相続人の意思(遺言書)によって遺産を相続できなくなるのは被相続人の「兄弟姉妹」ということになります。
被相続人の配偶者、子ども、および親には遺留分がありますから、ある程度の遺産を相続することができます。

また、遺留分があるとしても行使できる期間には制限がありますから、早めに遺留分侵害額請求権を行使する必要があります。

遺言書の内容は遺産の持ち主(被相続人)が自由に定めることはできますが、これから遺言書を作成しようと考える人は、家族構成によっては作成後の影響がありますから、誰が相続人になる可能性があるかを考慮する必要があるかもしれません。
あるいはまた、すでに作成した遺言書の内容を書き換える必要があるかもしれません。

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