会社が「お前はクビだ!」と従業員に面と向かってクビを宣告しても、解雇は無効となる可能性があります。
しかも、解雇が無効となると、その従業員を雇い続けなければいけない上に、不当な解雇をしたということで、損害賠償を支払う必要も出てきます。
これを従業員の側から見れば、いきなり会社をクビになることはないということになります。
解雇するには正当な理由が必要
会社が従業員を解雇しようと思っても、解雇するには正当な理由が必要です(労働契約法16条)。
単に従業員に能力が足りない、ということでは解雇は認められません。
(解雇)
労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
また、解雇が認められるためには、あらかじめ「就業規則」に解雇理由について定めていなければいけません(労働基準法89条)。
なお、就業規則そのものが作成されていない場合は、30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条)。
(作成及び届出の義務)
労働基準法第89条
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
第3号 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
第3号の2 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
第10号 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
解雇の予告
仮に解雇に正当な理由が認められるとしても、いきなり「明日から来なくていい」と解雇できるわけではありません。
解雇するには30日以上前に予告をしなければいけません(労働基準法第20条1項)。
(解雇の予告)
労働基準法第20条第1項
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
もし30日以上前に予告をせずに解雇をしたい場合は、短縮する日数分の賃金を支払う必要があります(労働基準法20条2項)。
つまり、賃金を払えば、すぐに解雇できるということになります。
もちろん、解雇を正当化する理由が必要です(先述の労働契約法16条)。
(解雇の予告)
労働基準法第20条第2項
前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
もし、解雇予定日の30日以上前でなく、かつ、日数分の賃金の支払いも受けられない従業員は、会社に対して解雇の無効を主張することが可能です(参照:会社から退職をほのめかされたら?)。
退職証明書
解雇を宣告された従業員は、会社に対して、「退職証明書(解雇理由証明書と呼ばれることもあります)」を請求することができます(労働基準法22条)。
会社は、退職証明書の交付を拒否した場合、30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条)。
正当な解雇理由があるなら、請求された解雇理由証明書を交付できるはずです。
(退職時等の証明)
労働基準法第22条
第1項 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
第2項 労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
第3項 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
解雇規制は緩和されるべきか
以上、かんたんに説明してきたとおり、日本では会社による一方的な解雇はできないようになっています。
そのため、「解雇規制の緩和」が重要なテーマとして議論されています。
「解雇規制」には解雇を制限することで労働者の雇用を守る側面がある一方、正社員の解雇が難しいという面もあります。
したがって、正社員としての雇用を減らし、非正規雇用を増やすという傾向に拍車をかけているという問題も指摘されています。
また、解雇規制を緩和することで、雇用の流動性を上げるという働き方改革の側面からも解雇規制の緩和が議論されています。
これからの議論の状況によっては、解雇に関する法制度が変更される可能性はあります。
しかし、現状では上で説明したとおり、従業員は会社から一方的に解雇されることはありません。
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