ある人が亡くなると相続が開始します。
家族としては、いろいろやらなければいけないことに追われ相続の手続きどころではありませんが、相続の手続きには期限があります。
相続の手続きのタイムリミットは3か月です。
相続人(遺産を相続する人)は、被相続人(遺産の持ち主で、遺産を相続される人)が亡くなってから3か月以内に相続の手続きをしないといけません(民法915条)。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条第1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
相続の種類は
- 単純承認
- 限定承認
- 相続放棄
の3つの種類があります(参照:相続方法は3種類)。
この3つのうち、単純承認以外の残りの2つ、限定承認と相続放棄の手続きを3か月以内にしないといけません。
したがって、先に限定承認と相続放棄の説明をしてから、最後に単純承認の説明をします。
なお、「家族を亡くした経験はあるけど特別な手続きをした覚えはない」という人は単純承認をしたことになっています。
限定承認
相続では、預金や不動産などのプラスの財産と同時に、借金(債務)などのマイナスの財産も相続します。
したがって、被相続人(亡くなった人、この人の遺産を相続することになります)に借金がある場合、相続人が被相続人の借金の返済を引き継ぐことになります。
限定承認というのは、相続財産の範囲内で借金などのマイナスの財産を相続するものです(民法922条)。
(限定承認)
民法第922条
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
例えば、被相続人の遺産が、現金600万円・借金1,000万円だったとします。
このすべてを相続すると、プラスの600万円とマイナスの1,000万円の相続ですから、相続人にはマイナスの400万円(借金)が残ることになります。
計算式 : 現金600万円 + 借金1,000万円 = 遺産(借金)400万円
| プラスの財産 | マイナスの財産 | 遺産の合計 | 限定承認(相続する遺産) |
|---|---|---|---|
| 600万円 | 1000万円 | -400万円 | 0円 |
そのため、被相続人から相続した1,000万円の借金を返済するときに、遺産の600万円から支払った残りの400万円の借金は遺産の現金では足りませんから、残りの借金は相続人自身の財産から返済することになります。
しかし、限定承認をするとプラスの600万円の範囲で借金を相続することになりますから、遺産の600万円で支払った残りの400万円の借金の返済の義務はなくなります(同時に、手元に残る遺産もありません)。
したがって、もし被相続人の遺産でプラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、限定承認という相続方法の選択をするべきということになります。
なお、限定承認をするには、被相続人が亡くなったときから3か月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります(民法924条)。
(限定承認の方式)
民法第924条
相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
3か月以内に手続きをしないと限定承認は認められず、プラスの財産を超えてマイナスの財産を相続することになり、借金の返済をしなければいけなくなります。
そのため、限定承認を選択するときには3か月という期間内に、相続財産を調査して債務の有無を明らかにしなければいけません。
相続放棄
限定承認では、被相続人の財産をプラスの財産の範囲で相続することになりますが、相続放棄をすると被相続人の財産一切を相続しません(民法939条)。
つまり、プラスの財産もマイナスの財産も相続しないのです。
もし、被相続人にプラスの財産がなくマイナスの財産(借金)しかないと分かっていれば、相続放棄を選択すべきことになります。
相続放棄をすると、被相続人の借金などの返済の義務はありません。
(相続の放棄の効力)
民法第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
相続放棄をするには、被相続人が亡くなってから3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければいけません(民法938条)。
(相続の放棄の方式)
民法第938条
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
なお、相続放棄は、被相続人に借金がない場合にも活用することがあります。
例えば、特定の相続人のみに遺産を相続させたい場合に、ほかの相続人が相続放棄の手続きをすることで、特定の相続人だけに相続させることができます。
被相続人が何らかの事業や農業を営んでいたケースで、事業用財産の散逸を防止することを可能とします。
単純承認
限定承認や相続放棄をしない場合は、単純承認という相続方法を選択することになります。
単純承認では、被相続人の財産をプラスの財産、マイナスの財産の区別なく、すべて相続することになります(民法920条)。
(単純承認の効力)
民法第920条
相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
ほとんどの相続が単純承認で行われており、これまでに家族が亡くなったときに、家庭裁判所で相続の手続きをしたことがないという人は、法的には単純承認をしたことになります(民法921条)。
そのため、単純承認では3か月という期間制限を意識することもありません。
相続税の支払いの必要もなかった人は、特に相続したという意識もないかもしれません。
(法定単純承認)
民法第921条
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
第1号 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
第2号 相続人が第915条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
第3号 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
いつから3か月
なお、3か月という期間はいつから始まるかについてですが、ここまでの説明では「被相続人が亡くなってから」3か月という表現を使いましたが、実は正確な表現ではありません。
正確には、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」ということになります(民法915条)。
たいていのケースでは、「自己のために相続の開始があったこと」を知るのが被相続人が亡くなった日ですから、上記のような表現を使いました。
しかし、場合によっては「自己のために相続の開始があったことを知った時」は被相続人が亡くなった日と一致しないこともあります。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
相続人になる順番
なぜ被相続人の亡くなった日と相続の開始を知る日が一致しないのでしょうか。
それは相続人になる順番が関係しています(参照:相続人と相続分)。
被相続人になる順番は以下の順番となっています(民法886条以下)。
なお、どの順番であっても被相続人の配偶者(結婚相手、夫から見た妻、妻から見た夫のこと)は常に相続人になります。
- 被相続人の子ども
- 被相続人の親
- 被相続人の兄弟姉妹
| 相続人 | 相続人になる条件 | |
|---|---|---|
| 1 | 配偶者・子ども | |
| 2 | 配偶者・被相続人の親 | 子どもがいない |
| 3 | 配偶者・被相続人の兄弟姉妹 | 子ども・親がいない |
被相続人に子どもがいる場合、相続人になるのは、配偶者と子どもです。
被相続人に子どもがなく、親が存命の場合は、配偶者と子どもです。
被相続人に子どもも親もなく、兄弟姉妹がいる場合は、配偶者と兄弟姉妹です。
もし、被相続人に配偶者がいなければ、子ども、親、兄弟姉妹が単独(注)で相続します。
(注)子どもと親、子どもと兄弟、子どもと親と兄弟、といった組み合わせでの相続はありません。子どもがいれば子どもだけが相続人になり、親がいれば親だけが相続人になります。
モデルケースで3か月を考える
以上のことを踏まえて、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」を考えてみましょう。
ここでは、被相続人に配偶者と子どもがいて、両親ともにすでに他界しているケースを想定します。
そして、被相続人には存命の兄がいるとして考えます。
このモデルケースにおいては被相続人には多額の借金があり、プラスの財産はほとんどなかったため、配偶者と子どもは相続放棄を選択することにします。
第一順位の配偶者と子どもが相続放棄を選択したため、第三順位の被相続人の兄が相続人になります。
被相続人の家族関係
- 配偶者
- 子ども
- 被相続人の兄
- 両親(他界)
被相続人が亡くなると、被相続人の兄としては、配偶者と子どもがいるため、自分は相続しないと思っています。
しかし、配偶者と子どもが相続放棄の手続きをすると、兄弟姉妹が相続人になりますので、被相続人の兄が相続人になります。
被相続人の兄としては、配偶者と子どもが相続放棄をしたことを知った日が「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」となり、その日から3か月以内に相続の手続きをしなければいけないことになります。
相続人が相続放棄をするということは、たいていのケースで多額の借財を抱えたケースですから、「自己のために相続の開始があったことを知った時」にはすみやかに相続の手続き(相続放棄を選択することになるでしょう)をしなければいけません。
3か月という期間は長くはありません。
とくに、兄弟の財産状況というのは知らないことが普通ですから、財産の調査の時間を考えると、まったく余裕はないといっても過言ではありません。
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