恋愛と結婚は、そのどちらも一対の男女の結びつきという点で共通しています。
しかし、恋愛と結婚には大きな違いがあり、結婚には法的な効果が伴います。
ここで説明するのは、婚姻届を役所に提出して成立した結婚(婚姻)のことで、内縁(事実婚)の場合は、少し事情が異なります。
結婚すると発生する効果
結婚のことを法律上は「婚姻」と表現します(憲法24条)。
憲法第24条第1項
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
第2項
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
また、婚姻届を役所に提出して成立する婚姻(結婚)のことを、法律上の結婚ということで「法律婚」とも言います。
婚姻をすると、以下の効果が発生することになります。
- 夫婦同氏
- 同居・協力・扶助の義務
- 成年擬制(廃止)
- 夫婦間の契約取消権
- 夫婦財産制
夫婦同氏
結婚をすると、夫婦は夫または妻いずれかの氏を名乗ることになります(民法750条)。
(夫婦の氏)
民法第750条
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
男女どちらの姓(氏)を夫婦の姓に選んでよいのですが、実態としてはほとんどの夫婦が夫の姓を名乗っています。
なお、一般に夫婦の姓を妻の氏に決めた場合(夫が妻の姓を名乗ることにした場合)、「婿養子」などということがありますが、実際には「婿養子」という制度はありません。
夫が妻の姓を名乗ることになっても、妻の「家に入る」ことはなく、妻の両親と親子(養親子)関係になることもありません(参照:婿養子は養子?)。
夫の姓を名乗る場合も、妻の姓を名乗る場合もどちらも全く同じ効果しかありません。
なお、現在、国会で夫婦別姓に関して議論されています。
同居・協力・扶助の義務
結婚すると、夫婦間には、同居・協力・扶助の義務が生じます(民法752条)。
(同居、協力及び扶助の義務)
民法第752条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
同居と協力は、日常的な感覚で理解できると思います。
扶助というのは、いわゆる「生活費」を分担することで、「夫が家計を顧みない」などというときの「家計」のことを言います。
夫婦のいずれか、あるいは夫婦の両方が、同居・協力・扶助の義務を守らない場合(夫婦関係を維持しようと努力しない場合)は、離婚原因となります(参照:離婚するための手続きは3種類)。
同居義務に関しては、単身赴任の問題があります。
別居することになる単身赴任は同居義務違反のように思えますが、離婚の原因にはなりません。
もちろん、単身赴任先に別の「家庭」を作っているような場合(不倫している場合)は離婚の理由になりえます。
なお、法律には明記されていませんが、「貞操義務」として、夫婦以外の相手と性的な関係を持ってはいけない義務も婚姻の効果として認められます。
第三者と性的関係を持てば、「不貞行為」として離婚原因となります。
他人と性的関係を持ってはいけない代わりに、夫婦間の性行為には応じなければいけないかというと、そこまでの効果はなく、性行為の強制はできませんが、性行為に応じないこと自体は離婚原因となることがあります。
性的な問題は、夫婦の「協力」によって、妥協(注)しなければいけない問題と考えてもいいかもしれません。
(注)妥協というのは、不貞行為を含みません。
成年擬制(廃止)
未成年者(男は18歳から19歳、女は16歳から19歳)が結婚すると、成人として扱われることになっていました(旧民法753条)が、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた結果(民法731条)、婚姻による成年擬制の制度はなくなりました(参照:何歳になったら結婚できる?)。
(婚姻による成年擬制)
旧民法第753条
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
(婚姻適齢)
民法第731条
婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。
夫婦間の契約取消権
一般的な社会的関係においては、一度契約をすると、一方的な取り消しはできません。
つまり、契約の当事者双方が取り消しに同意しなければ取り消しができません。
しかし、夫婦の間の契約に関しては、一方的に契約を取り消すことができます(民法754条)。
(夫婦間の契約の取消権)
民法第754条
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
「契約」と書くと、夫婦間で契約を結ぶことがあるのか?と思うかもしれませんが、これを「約束」と書くなら、日常的に約束をしていることに思い至るでしょう。
契約取消権があるということは、その約束を一方的に取り消す(約束を破る)ことができるということです。
しかし、夫婦間の契約(約束)の取り消しを繰り返していれば、夫婦間の信頼関係は壊れてしまうでしょうから、これも離婚原因となりえます。
なお、婚姻中にした契約であっても、離婚後には取り消せません。
婚姻中であっても、夫婦関係が破綻している(離婚直前)場合も取り消しはできません。
夫婦財産制
夫婦は、結婚する前(婚姻届を提出する前)に、財産関係の契約(取り決め、約束)をすることができます(民法755条)。
この財産契約は、契約取消権のところで説明した夫婦の契約のことを含みません。
両者は全く別のものとなります。
(夫婦の財産関係)
民法第755条
夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。
なお、一般に、財産契約を結ぶ夫婦はほとんどいません。
婚姻前に登記をしなければいけない、婚姻後の変更ができないなど、制約が大きすぎるからです。
(夫婦財産契約の対抗要件)
民法第756条
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
(夫婦の財産関係の変更の制限等)
民法第758条第1項
夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。
ただし、夫婦の財産契約の内容は自由に定めることができるため、利用の仕方によっては活用の余地は多分にあります。
法定財産制
実際には、財産契約を結ぶことはなく、夫婦の財産関係は法律の定めに従うことになります(民法760条以下)。
夫婦で生活費を分担する、夫婦で債務を連帯する、婚姻後に取得した財産は夫婦の共同所有、となります。
(婚姻費用の分担)
民法第760条
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
(日常の家事に関する債務の連帯責任)
民法第761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
(夫婦間における財産の帰属)
民法第762条
第1項 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
第2項 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
なお、夫婦の共有財産となるのは、婚姻後に取得した財産のみで、結婚する前から所有する財産は特有財産として本人のみの所有財産となり、相手のものにはなりません。
したがって、特有財産は離婚時の財産分与の対象になりません(参照:離婚する前に決めること)。
婚姻の効果は幅広い
以上のように、婚姻の効果は財産関係が中心ですが、そのほかにも、配偶者(夫から見た妻、妻から見た夫)の相続に際して常に相続人になれる(参照:相続人と相続分)、自動的に婚姻中に生まれた子どもの親となる、婚姻中に生まれた子どもの親権者になるなど、婚姻の効果は幅広く及びます。
結婚契約書という選択
これまで婚姻の効果について説明してきましたが、おそらくほとんどの夫婦が細かい約束事についてあいまいなまま結婚しているのではないでしょうか。
決めるべきことを決めていなかったために後々もめることになってはもったいないと言えるでしょう。
そこで、あえて結婚前に契約を結ぶことによって夫婦間の無用のもめごとを避けることが可能になります。
なお、結婚前の契約をお勧めするのは、結婚後よりも結婚の前のほうが当事者間の話し合いが円滑に進む可能性が高いということが理由です。
契約取消権の活用
すでに説明したとおり、夫婦以外の人(第三者)に対する効果を持つ夫婦財産契約は結婚の前に登記をしなければ効果を生じません(民法756条)が、夫婦の間のみで通用する契約を結ぶことは可能です(民法754条)。
(夫婦財産契約の対抗要件)
民法第756条
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
(夫婦間の契約の取消権)
民法第754条
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
しかし、夫婦間の契約取消権を活用すれば、結婚に関する夫婦間の約束事を契約することが可能となります。
「結婚契約(婚後契約などと呼ぶことがあります)」と言われる契約を結ぶ必要があります。
契約という名前のとおり、夫婦が双方合意の上で契約書にサインをすることによって効果を生じます。
一度結んだ結婚契約は、あとから変更することができます(離婚後は変更できません)。
したがって、契約ではありますが、夫婦財産契約と違って気軽に行うことが可能なのが特長となっています。
結婚契約を結んだ際は「結婚契約書」という契約書の形を取ることになります。
結婚契約書の中に盛り込める内容は、当事者である夫婦(あるいは結婚しようとする男女)が合意をすれば、ある程度は自由に取り決めることが可能です。
結婚契約書の内容の例としては、
- 家事の分担(食事は月水金は夫、火木土は妻、日曜日は外食、など)
- 休日の過ごし方(年に一度は海外旅行に行く、など)
- 生活費の負担(食費は夫、家のローンは妻、など)
などが考えられます。
これは一例ですので、その他たいていのことは内容に盛り込むことができます。
どのような結婚契約書を作るか(結婚契約を結ぶか)は当事者の夫婦で話し合って決めましょう。
作成した契約書はあとから変更することができます。
結婚生活を続けていると、家族構成や家族関係に変化が起こるものです。
事情の変更に応じて結婚契約書を修正・更新していきましょう。
家族に関するご相談は
結婚契約書の作成をお考えの際はお気軽にご相談ください。
相談者の家族関係や財産状況など、事情に応じたアドバイスをいたします。
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