家族の介護をすると相続分が増える? 寄与分にはあまり期待できない

日本人の平均寿命が長くなった結果、自立した生活ができなくなって、配偶者や子どもなどの家族に身の回りのケアをしてもらっている人も多くなっています。
長期間にわたって家族の介護をしている方にとっては、その貢献を相続の場面で評価してもらいたいと考えることもあるでしょう。
このような、家族に対する献身を相続の場面で評価する制度としては「寄与分」があります。

寄与分

寄与分については、民法904条の2に定められています。

民法
(寄与分)
第904条の2
第1項 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

すなわち、寄与分というのは、被相続人(亡くなった人、遺産を遺す人)の事業を手伝って貢献した、被相続人の看護や介護をした人が、その貢献分を加味してほかの相続人よりも多くの財産を相続することができるというものです。
貢献の内容としては、看護や介護にとどまらず、家業への貢献なども考慮されることになります。

寄与分が認められることは難しい

ただし、寄与分の制度には問題があり、実際の相続の場面で寄与分として認められることは非常に難しいということです。
つまり、被相続人の看護を長年にわたって献身的に行ったことだけでは寄与分として主張できないということなのです。

例えば、被相続人が自営業で、一緒に働いたというだけでは寄与分とはなりません。
普通は、家業を手伝うといっても給与を支払われているはずで、給与を受け取っている場合は、寄与分としての特別の献身としては評価されないのです。
被相続人の事業を拡大したのは自分であっても、あくまでも仕事として行ったにすぎないと評価されてしまいます。

また、看護や介護に関しても、そもそも民法(730条)では、直系血族及び同居の親族が互いに扶け合うことを求めており、ほかの家族の面倒を見ることを当然と考えているため、被相続人の看護・介護を長年にわたって行ったとしても、特別な献身としての評価はされません。

民法
(親族間の扶け合い)
第730条
 直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

相続分は平等が原則

したがって、特別な貢献がある人に寄与分が認められるといっても、実際の相続の場面では、自分は被相続人に対し特別な献身をしてきたと考える人にとって望ましい結果を実現することは難しいということになります。

一応、看護・介護に関しては、日常的な費用を記録しておくことで、寄与分として評価されることはあります。
例えば、介護用品を購入したときのレシートを保管しておくか、介護のために支払った費用を家計簿のような形で記録しておく必要があります。

しかし、それでも認められるのは最低限の金額となり、相続分としては、民法の原則どおりの割合とそれほど変わらない金額で相続することになります(参照:相続人と相続分)。
日常的にケアをしている側からすれば、それは心情的に納得できないところですが、残念ながら法的にはそうなっています。
つまり、子どもが複数いる場合、「同居して一日中ケアをした子ども」と「独立して以来ほとんど親に顔を見せない子ども」が、ほぼ同じ金額を相続するということです(子ども相続分の割合は同じ)。
もちろん、相続人同士の話し合いで、献身的な看護・介護をしてきた家族に多めに相続するように取り決めることは可能ですが、ほかの相続人に強制することはできません(民法900条)。
その場合は法律の規定どおり、法定相続分を相続することになります。
すなわち、子どもの人数で頭割りします。

民法
(法定相続分)
第900条
 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)

家族の献身を評価するなら遺言書で配慮する

あとから(被相続人が亡くなってから)寄与分を主張しても、本人が納得する金額となることはあまり考えられません。
したがって、日常的な献身を評価するためには、被相続人本人が家族の貢献を反映した「遺言書遺言、参照:遺言書には3つの種類)」を作成して、その家族に多めに相続できるように定めておくといいでしょう(参照:遺言書を作成するときの注意点)。
ただし、相続人の側から被相続人本人に自分の献身を配慮した遺言書の作成を強制できるものではありません。

もし遺言書がなければ、遺産分割の話し合い(遺産分割協議)において自身の後見分の上積みを主張することは厳しくなります。
そのため、家族の介護には見返りを求めない覚悟が必要です。
また、家業への貢献を反映させたければ、あらかじめ家業に関する資産の名義を自分名義に変更するなどの工夫が必要となります(名義を変更することで遺産から外すことが可能になります)。

以上のように、法律の規定は家族の献身を適正に評価するようにはなっていません。
また、家族(配偶者や子ども、親など)の関係によっては、遺産分割(寄与分に関する)話し合いがうまくいくとは限りません。
したがって、家族の献身の評価は被相続人(献身を受ける人)の役割ということになります。

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