家族関係の悩みを抱えている人もいるかもしれません。
家族との関わりを断ちたい人もいるでしょう(参照:家族と縁を切る方法はある?)。
なかでも、兄弟姉妹(以下、兄弟)の関係がこじれてしまった人も多いでしょう。
とくに兄弟のもめごとは「骨肉の争い」などと表現されることもあります(注)。
(注)「骨肉の争い」自体は、兄弟に限らず血縁関係にある者同士の争いのことを指す言葉のようです。
どうしても兄弟との縁を切りたいと考えて、完全にかかわりを断てる手続きを探している人もいると思います。
ですが、兄弟との縁を切ることは難しいと言わざるを得ません。
法律上、家族との関係を断つ制度はありません。
したがって、兄弟との縁を切りたいと思っても、どうしても最小限のかかわりは継続されることになります。
なお、ここでいう家族とは「血縁関係」にある家族のことを意味します(参照:家族の範囲は意外と広い)。
結婚
兄弟とのかかわりを減らせる制度として考えられるのが「結婚(婚姻)」です。
もちろん、婚姻をしたからといって兄弟との関係が切れるわけではありませんが、別の戸籍に移ることが可能です(戸籍法)。
法律上の家族関係自体に変更はありませんが、戸籍が別になることで(たいていの場合は住む場所も変わります)兄弟のことを意識する場面を減らすことにはなるでしょう。
戸籍法
第6条
戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。ただし、日本人でない者(以下「外国人」という。)と婚姻をした者又は配偶者がない者について新たに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。第74条
出典:e-Gov法令検索 戸籍法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224_20230401_503AC0000000037&keyword=%E6%88%B8%E7%B1%8D%E6%B3%95)
婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項
養子縁組
養子縁組も家族関係を変更する制度です。
養子縁組をすると、実の親子とは別に、養親との親子関係が生じることになります(参照:民法727条等)。
民法
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(縁組による親族関係の発生)
第727条
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
親子関係を切れば、兄弟関係が切れると考えて養子縁組を希望する人もいるかもしれません。
養子縁組をすれば、血縁のある兄弟との関係をかなりの程度で切ることができます。
縁組後は、日常生活で血縁のある兄弟との縁はなくなるといってよいでしょう。
ただし、養子縁組をしても、実の親子関係は残りますし、実の兄弟関係も残ります。
相続の場面でも兄弟とのかかわりが残ります。
血縁関係のある親(実の親)が亡くなった場合、血縁のある兄弟と実親の遺産を相続することになります(民法887条、参照:相続人と相続分)。
民法
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条第1項
被相続人の子は、相続人となる。
相続
婚姻や養子縁組をしていても、相続の場面ではどうしてもかかわりを持たなければいけません。
親の相続
親が亡くなると、子どもが相続人となります(参照:相続人と相続分)。
もし親が「遺言書(遺言)」を遺していない場合、兄弟で遺産相続を行わなければいけません。
すでに仲の悪い兄弟の場合、お金に関する話し合いをしなければいけないというのはとても気が重くなります。
そしておそらく、仲たがいをしている兄弟間での話し合いはまとまりません。
さらに兄弟の関係が悪化することとなるでしょう。
したがって、親には遺言書を作成してもらうように頼んでおきましょう(参照:遺言書には3つの種類)。
遺言書の作成をお願いする場合、兄弟間の相続分が平等になるようにお願いするとよいでしょう。
なぜなら、相続分に不公平があると、その点に不満を持った兄弟が遺言書の内容に納得しない可能性があるからです。
公平な相続の実現には、法律に従った割合で遺産を分割します(民法900条)。
民法
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(法定相続分)
第900条
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
あるいは、そもそも相続を放棄するという選択もあります(民法915条、参照:相続方法は3種類)。
民法
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条
第1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
相続放棄をするにはほかの相続人(兄弟など)の了承を得る必要はありませんから、自分だけで放棄することができます。
なお、相続放棄をする・した旨だけは報告しておきましょう。
相続の放棄を行うと、相続人による遺産分割の話し合い(遺産分割協議)に参加する必要はなくなります(民法938条、939条)。
したがって、兄弟と接触せずに済みます。
民法
(相続の放棄の方式)
第938条
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。(相続の放棄の効力)
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
兄弟の相続
兄弟が亡くなっても相続は発生します(注)。
ただし、家族構成によって、相続の場面でかかわる必要があるかどうかが変わってきます。
(注)自分が亡くなった場合も同じことが起こります。以下の説明の「兄弟」の部分を自分のことに読み替えてください。
兄弟に子どもがいる
兄弟に子どもがいる場合、兄弟の子ども(と配偶者)だけが相続人になります(民法887条、890条)。
民法
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条
被相続人の子は、相続人となる。(配偶者の相続権)
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
第890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
兄弟に子どもがいない
兄弟に子どもがいない場合、自分が相続人になる可能性があります(民法889条)。
自分が相続人になるのは、自分たちの両親がすでに亡くなっていて、その後に兄弟が亡くなった場合です。
父母のいずれかが存命である場合は、親が相続人になりますから、兄弟(と自分)は相続人にならず、遺産相続にかかわる必要はありません。
なお、兄弟の配偶者は常に相続人になります(民法890条)。
民法
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第889条
第1項 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹(配偶者の相続権)
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
第890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
借金の肩代わりをする必要がある?
おそらく、兄弟との縁を切りたい人の一番の心配は兄弟のお金の問題に巻き込まれることでしょう。
しかし、基本的には心配はありません。
自分が知らない間に借金の保証人に名前を使われていたような場面でも、自ら保証人になったのでなければ(保証人になるには保証人自らが契約書に署名する必要があります)、保証人として借金を肩代わりする(返済する)必要はありません(民法446条)。
民法
出典:e-Gov法令検索 民法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
(保証人の責任等)
第446条
第1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
第2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
第3項 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
兄弟との縁を切る方法
制度上は兄弟との縁を切る方法はありません。
しかし、以上かんたんに説明したとおり、かなり特殊な場面以外でかかわりを持つ必要もありません。
したがって、連絡を取らないという単純な方法で、兄弟との縁切りが実現できます。
絶縁状を送ってみる
法律上は、きょうだいの縁を切る方法がないことについて説明をしてきました。
最後に、事実上、縁を切る方法について考えてみます。
その方法は「絶縁状(もしくは、縁切りの誓約書、絶縁誓約書などと呼ばれます)」を送付することです。
「絶縁状」とは、縁を切りたい相手に対して送る手紙のことで、それ自体に法的な効果はありません。
あくまでも、以後の縁切りを一方的に宣言するものにすぎません。
しかし、こちらの意思を伝える手段としては使えます。
また、送った本人にとっても、縁切りの手紙を送ることで、やれることはやったという精神的なけじめをつけることにもなります。
荒江行政書士事務所では、絶縁状の作成のご依頼を承っております。
絶縁状の作成の際は、ご希望に応じて行政書士名での作成、および送付を行います。
家族に関するご相談は
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