長時間労働で脳卒中リスクが高まる

WHO(世界保健機関)とILO(国際労働機関)が、長時間労働に関する健康リスクを発表したという報道(テレ朝news「週55時間以上の労働で“脳卒中リスク”1.35倍に」)がありました。
それによると、週55時間以上の労働時間は週40時間の労働時間に比べて、脳卒中のリスクを1.35倍に高めるということでした。
長時間労働の危険性、身体的なリスクを示唆するものと言えるでしょう。

週55時間までオーケーという意味ではない

なお、「週55時間以上の労働が脳卒中リスクを高める」というのは、「労働時間が週55時間を超えたら脳卒中リスクが高まる」という意味ではなく、週40時間を超えると徐々に脳卒中リスクを高めていくという意味です。
DIAMOND online(「長時間労働は脳卒中リスク 週41~48時間でも上昇」)の2015年の記事のデータも参照すると、脳卒中リスクは以下のように高まるということです。

労働時間脳卒中リスク
週40時間1
週41~48時間1.10倍
週49~54時間1.27倍
週55時間以上1.35倍

週40時間労働を基準として、週の労働時間が増えるにつれて徐々に脳卒中リスクが高まっていくことが分かります。

週55時間ということは3時間の残業

「週55時間以上の労働が脳卒中リスクを高める」とは、「労働時間が週55時間を超えたら脳卒中リスクが高まる」のではなく、週40時間を超えると徐々に脳卒中リスクを高めていくと上でも触れていますが、最初、このニュースに触れたとき、週55時間以上の残業が脳卒中リスクを高めるという意味かと思いました。
つまり、1週間の法定労働時間40時間と残業時間55時間を合わせて95時間の労働時間だと考えてしまったのですが、そうではありませんでした。

週55時間は、法定労働時間(労働基準法32条)と残業時間(労働基準法36条)を含めた数字であって、残業時間そのものは15時間ということでした。
したがって、毎日3時間程度の残業が脳卒中リスクを高めるということになります。

労働時間
労働基準法第32条第1項
 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
第2項
 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

出典:e-Gov法令検索 労働基準法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049_20230401_430AC0000000071&keyword=%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%9F%BA%E6%BA%96%E6%B3%95

時間外及び休日の労働
労働基準法第36条第1項
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

出典:e-Gov法令検索 労働基準法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049_20230401_430AC0000000071&keyword=%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%9F%BA%E6%BA%96%E6%B3%95

週55時間の労働は法律違反、しかし50時間なら?

週15時間の残業というと、1日当たり3時間の残業となります。
1か月に20日の労働日があったとして、毎日3時間残業をすると、1か月で60時間の残業となってしまいます。
時間外労働の上限規制(参照:時間外労働の上限規制)」では、残業は1か月45時間までと決められていますから、法律で60時間の残業は規制されており(労働基準法36条)、健康リスクを踏まえた規制となっています。

ただし、毎日3時間は法律上不可能とはいえ、1日2時間(1ヶ月40時間)までなら時間外労働の上限規制の範囲内です。
毎日2時間の残業(週50時間ほどの労働時間)をしている職場は珍しくはないでしょう。
しかし、上の表を踏まえると、脳卒中リスクは週40時間労働(残業なし)に比べて約1.3倍ほどに高まることになります。

残業が常態化すると、感覚がマヒして長時間労働に慣れてしまいますが、働けば働くほど健康リスクが上がっていくことは知っておいて損はありません。

脳卒中

そもそも、脳卒中というのはどういう病気なのでしょうか。
国立循環器病研究センター(「脳卒中」)から引用します。

脳卒中とは、脳の血管が破れるか詰まるかして、脳に血液が届かなくなり、脳の神経細胞が障害される病気

原因によって、
1)脳梗塞(脳の血管が詰まる)
2)脳出血(血管が破れる)
3)くも膜下出血(動脈瘤が破れる)
4)一過性脳虚血発作(TIA)(脳梗塞の症状が短時間で消失する)
の4つに分類

そして、脳卒中の予防が重要な理由として、以下のことが挙げられています。

脳卒中は日本人の死因の第3位を占める
生存者にも、しばしば重篤な後遺症が残る
寝たきり等、要介護者の原因の3割以上を占める
高齢化とともに、患者数の増加が予測されている
国民医療費の1割を占めている⇒脳卒中は社会的負荷の最も重い疾患

そのほか、脳卒中が疑われる症状など、国立循環器病研究センターのページに詳しく紹介されています。

体を壊しては残業することはできません

仕事の状況、会社の状況によってはやむを得ず残業が常態化している場合もあるでしょう。
しかし、身体を壊してしまっては残業することはおろか働くことができなくなってしまいます。
長時間労働によって社員が脳卒中を引き起こしてしまうのは、会社にとって貴重な社員を失うことになりますし、社員本人にとっても健康を害してしまっては働くことができなくなります。
お金を稼ぐためであっても健康を害してはお金を使うことができません。
脳卒中の治療費・療養費を過剰な残業によって稼ぎ出す、ということは本末転倒と言えるでしょう。

もし、残業が常態化して従業員の負担が加重になっているなら、現在の会社の体制を見直さなければいけません。
そして、従業員の立場からは、現在の職場では健康を保てないなら、退職・転職を考えるときかもしれません。

  • 退職を言い出せない
  • 退職の意思を伝えたのに聞き入れてもらえない
  • 退職を言い出す気力がない
  • 会社にはもう関わりたくない
  • 退職の手続きがめんどう

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