事実婚なら夫婦別姓を実現できる

夫婦別姓が国会で議論されていますが、実際に導入されるかどうかはもうしばらく議論を重ねないと結論は出ないでしょう。
「法制化されるまで待てない」という人が結婚で別姓を実現するには、法律婚ではなく「事実婚(内縁)」を選択肢に入れてもいいかもしれません。

なお、法律婚というのは、役所の窓口に婚姻届を提出する結婚(婚姻)のことで、法律上の結婚ということで法律婚といいます。
事実婚(内縁)というのは、婚姻届を提出せず(住民票上には夫婦として記載されます)、当事者が結婚と同様の関係であると認識している状態のことを言い、事実上の結婚ということで事実婚といいます。

法律婚では氏の変更が必要だが事実婚では不要

法律婚の場合は、夫または妻いずれかの氏を夫婦の氏として決める必要があります民法750条)が、事実婚の場合は氏を変更する必要はありません
そのため、結婚をしても夫婦同氏にしたくないという人は、夫婦別姓を実現するためにあえて事実婚を選択することも考えられます

夫婦の氏
民法第750条
 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

当事者にとっては結婚であっても法律的な扱いがことなることも

ただし、法律婚と事実婚では当事者にとっての認識としては、「結婚」という関係として認識されますが、法的な扱いが異なる場面が出てきます。

たとえば、

  • 親子関係の違い
  • 相続の違い
  • 税制の違い

といった場面で法律婚と事実婚の扱いが異なっています。

親子関係の違い

法律婚と事実婚のもっとも大きな違いは、親子関係の成立の仕方です。

法律婚では、女性(妻)が出産すると、その子どもは自動的にその女性と配偶者(夫)の子どもとなります。
しかし、事実婚では、女性(妻)が出産するとその女性の子どもになりますが、その女性のパートナー(夫)の子どもにはなりません
パートナー(夫)が子どもの父親になるには、「認知」という手続きが別途必要になります(民法779条、参照:親子関係を生じさせるために認知が必要な人も)。
なお、妊娠中に認知することも可能です(民法783条)。
認知をしても、子どもは父の氏(姓)を名乗ることはありません
子どもは母の氏を名乗ることになります。

認知
民法第779条
 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

胎児又は死亡した子の認知
民法第783条第1項
 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。

戸籍上の違い

戸籍の違いについても見ていきましょう。
法律婚の場合、夫婦とその間の子は、一つの戸籍に記載されます
しかし、事実婚の場合は、戸籍上は夫の戸籍と母子の戸籍の二つの戸籍に記載されることになります。
つまり、夫の戸籍には、子どもを認知したことだけが記載され、子どもは母の戸籍に記載されることになります。
なお、その際、母は自分の親の戸籍から抜けて、母と子二人の戸籍が新たに作られることになります(祖父母・母・子、という三世代の戸籍は作られません)。

相続の違い

法律婚の場合、配偶者(夫から見た妻、妻から見た夫)は常に相続人になります(民法890条)。
しかし、事実婚ではパートナー(事実上の配偶者)は相続人になりません(参照:事実婚(内縁)の相続は?)。

配偶者の相続権
民法第890条
 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。

もし、事実婚でパートナーに相続をさせようと思ったら、遺言書(遺言、参照:遺言書には3つの種類を作成して、パートナーに財産を遺贈する旨を記載する必要があります。
ただし、もし亡くなる側に家族がいる場合、家族の遺留分を考慮しなければいけません(民法1042条、参照:遺言書を作成するときの注意点)。

遺留分の帰属及びその割合
民法第1042条
第1項 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
第1号 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
第2号 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1
第2項 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条及び第901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

税制の違い

法律婚では配偶者控除などの税制優遇措置が受けられますが、事実婚では配偶者控除などの税制優遇措置は受けられません。

その他

そのほかの違いとしては、保険金の受取人になれなかったり(保険会社によっては家族以外の人も受取人に指定できます)、手術の立会人になれなかったり(病院によって違います)、法律婚に比べて事実婚の制約がいろいろと付きまといます。
その制約を我慢してでも夫婦別姓をつらぬくかどうかは各自の判断となります。

旧姓併記

法律婚と事実婚とでは、事実婚には不自由な面が多いことは否定できません。
そのため、夫婦別姓とは違いますが、事実上の夫婦別姓を実現する手段として、「旧姓併記」を選択する方法もあります。
婚姻届を提出して氏を変更した後、旧姓(旧氏)併記(総務省「住民票、マイナンバーカード等への旧氏の併記について」)の制度を利用するのです。
ただし、旧姓併記も不自由な制度といえるでしょう。

なお、当職の憶測にすぎませんが、夫婦別姓の法制化が実現するよりも、旧姓併記が可能となる場面が拡大するほうが可能性が高いと思われます。

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